女子レスリング伊調馨さんが、栄監督から強烈なパワハラを受けたという告発状が内閣府に送られたことを、週刊文春が報じて大きな話題となっています。パワハラ内容を告白したのはコーチなど五輪出場選手を含む複数のレスリング協会関係者。

伊調馨さんは、2004アテネ五輪・2008北京五輪・2012ロンドン五輪・2016リオ五輪で前人未到の4連覇を成し遂げた最強の金メダリスト。なのに栄監督の陰湿なパワハラ内容でコーチと練習場を奪われ、2020東京五輪出場はおろか選手生命まで奪われる危機にあるといいます。

栄監督は吉田沙保里さんなど金メダリスト6人を育て「女子のコーチは栄さん」というイメージだったので、パワハラが本当ならとても残念な話です。栄監督らレスリング協会はパワハラを否定し、告白者サイドと言い分が食い違っています。いったい何が本当なのでしょうか。
　
　

　
　

●伊調馨への栄監督パワハラ疑惑！告白者はコーチ？

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パワハラ被害の告発状をを提出したのは、伊調馨さんではなくレスリング関係者でもなく、貞友義典弁護士さんという弁護士です。1月18日に内閣府の公益認定等委員会にA4用紙7枚の告発状を提出しました。五輪出場選手を含む複数のレスリング協会関係者から依頼され作成したそうです。

告発状には日本レスリング協会幹部の不祥事とともに、栄監督が伊調馨さんにしたパワハラが書かれていました。

貞友義典弁護士は伊調馨を渦中の人にするのは心配だったそうですが、その通りになってしまいました。東京五輪出場できるか心配です。

パワハラ被害を告白した日本レスリング協会の元ナショナルコーチによると、告発状を作成した理由は協会への不信感。きっと田南部コーチも告白者に含まれてるのでは。

男子の場合はこの大会とこの大会に勝てば代表決定と決まりがあるが、女子の場合はなく、全国大会で2位になっても代表合宿に呼ばれないことも多々あるそう。

レスリング協会の体質は、十年も前から会長の指示に従う人ばかり集めていて、今まで告発をする人はいなかったそう。

つまり田南部コーチも他の告白者も、もうレスリング界でやっていけない覚悟で告白しています。

■公益財団法人「日本レスリング協会」
内閣府は【監督・税制優遇】
スポーツ庁は【管理・選手育成】
・福田富沼会長
・馳浩副会長（国会議員）
・栄和人選手強化本部長（ナショナルコーチ）
※公益財団法人なので国民にも透明性、情報公開が求められます。

●伊調馨への栄監督パワハラ内容

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栄監督が伊調馨さんにしたというパワハラ被害は主に3つです。

●伊調馨が栄監督からパワハラ疑惑　詳しい内容と経緯

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2000年、伊調馨さんは地元・青森県八戸市の中学校卒業後、愛知の中京女子大学(現・至学館大学)附属高校に進学。大学までの7年間、栄監督からレスリングの指導を受けました。

翌年には吉田沙保里さん、そのその翌年には姉の千春さんが同大学に入ってきました。伊調姉妹は栄監督の自宅に下宿し、「線が細くて荒削りだが伸び代がある」と期待されていました。

そして大学2年生で出場した2004アテネ五輪で金メダル、4年後の2008北京五輪で二連覇を達成。姉妹で金メダルを目指してましたが、姉の千春さんは両方とも銀メダルに終わり、その後に現役を引退。現在は地元・青森で高校教師をしています。

北京五輪のあと、伊調馨さんも引退の噂がありました。

■伊調馨と協会の確執の始まり

2008北京五輪から2カ月後、世界選手権出場を巡って確執が生まれました。

この世界選手権は東京で開催され、レスリング協会は日本テレビから1億円の放映権料を得ることになっていました。しかし伊調姉妹は怪我を理由に欠場するつもりで、そうなると放映権料は6000万円に減額されるので栄監督始め幹部たちは必死に説得。

最終的にはやっぱり姉妹は欠場し、協会内部から恨み節が。

■栄監督のパワハラの引き金

2009年、伊調馨さんはさらにレベルアップするため違う環境を求め、育ててもらった栄監督の元を離れ、愛知から東京へ引っ越して1Kのアパートで一人暮らしをしながら、男子選手の練習しました。

栄監督は男子との練習について「男子選手に迷惑がかかる」と批判的でした。

ただそれは表向きで本心では激怒。「栄監督の指導で強くなれない」と言われたも同然で、コーチとしてのメンツを潰されたからです。

伊調馨さんが東京で見つけたコーチは、アテネ五輪の銅メダリストで当時全日本男子の田南部力コーチでした。「男子の合宿に参加させて欲しい」と頼むと田南部コーチ
は快諾して技術をいちから徹底的に教えこんでくれました。

伊調馨さんは男子選手や田南部コーチと練習するようになって、それまで感覚だけでやっていたレスリングの奥深さを知ったといいます。

　
　

　
　

■パワハラ1.田南部コーチに対する圧力

2010年9月「世界選手権モスクワ」で伊調馨さんは北京五輪以来2年ぶりのこの国際大会で、圧倒的な強さで優勝。

その裏で栄監督は、田南部コーチをホテルのロビーに呼び出し
「今後は伊調のコーチングをするな。
伊調が辞めても他の選手が育っているからいい。
俺の言うことを聞かなければ男子代表コーチを外す。
これは福田会長も高田専務理事も承諾済みの話だ」
とパワハラ発言。伊調馨さんがコーチを失ったら引退勧告と同じ。

田南部コーチは「あんなにレスリングに取り組める選手を辞めさせるんですか？」とパワハラに反論しましたが、栄監督は理由を答えませんでした。

同じ頃ナショナルトレーニングセンターでは高田専務理事が田南部コーチに「女子コーチの身にもなってみろ！惨めだろ！」と怒鳴りつけた場面もあったとか。プライドが大事みたいですね。

■パワハラ2.ロンドン五輪後、男子合宿への参加禁止

2012ロンドン五輪後、男子合宿への参加禁止「俺の言うことを聞かなければ出ていけ」

栄監督は伊調馨さんを代表から外して至学館大学の別の選手をオリンピックに出したがってましたが、伊調馨さんは2011日本選手権を勝ち抜いてロンドン五輪代表に。

伊調馨さんは金メダル候補と期待されるも、現地入りしてすぐじん帯を損傷する怪我。それでも試合では痛み止めを打ち、日本女子レスリング史上初となる五輪3連覇を達成。

するとロンドン五輪のあと、今度はそれまで参加していた「男子合宿への参加禁止」というパワハラを受けました。例によって理由の説明はありません。

パワハラ以外にも、伊調馨さんは2014年に母親トシさんが死去する悲しみに襲われます。

パワハラと母の死の影響なのか、2016年、夏にリオ五輪を控えた1月の国際大会で、13年ぶり敗北し連勝が189でストップしました。すると田南部コーチと敗因を徹底的に分析してリオに備えました。

■パワハラ3.警視庁レスリングクラブへの出入りを禁止

リオ五輪直前、練習拠点としていた警視庁レスリングクラブへの出入りを禁止。伊調馨さんはナショナルトレーニングセンターで1人で練習していました。

警視庁レスリングクラブ監督の土方政和さんは、レスリング協会の常務理事であり栄監督の高校時代の同級生です。

警視庁でほとんどの選手たちの指導をしていた田南部コーチも外され、選手たちも驚いていました。田南部コーチはその後、日本代表コーチさえも外されて、現在は母校・日体大でコーチを続けています。

■リオ行きの飛行機はエコノミー

2016リオ五輪行きの飛行機は、栄監督は自分が気に入っている吉田沙保里さんや登坂絵莉さんと一緒に、他に選手たちとは別の飛行機のビジネスクラスでリオに向かいました。

伊調馨さんは世間から4連覇が期待されているのにエコノミークラスという待遇。

そんな不遇にもめげず、伊調馨さんは決勝で残り5秒で劇的逆転勝利をおさめ4連覇を達成。日本の五輪史上初めてとなる快挙でした。

リオ五輪後の9月には伊調馨さんに国民栄誉賞が贈られ、受賞を誰に一番伝えたいか聞かれると「これまで自分を支えてくださった皆さま、私が拠点として練習でお世話になった警視庁第六機動隊の皆さんに伝えたい」と答えました。栄監督の名前は出ませんでした。田南部コーチの名前を出さなかったのは気を使ってのことでしょう。

しかしリオ五輪後、田南部コーチは理事だったのに理事会に行ったらイスがなかったという仕打ちまで受けています。

●栄監督　パワハラで伊調馨の東京五輪を阻止？

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伊調馨さんが所属するALSOKにはレスリング場がなく練習ができません。

現在は、田南部コーチのいる日体大で週に1～2回だけ体を動かす程度だといいます。パワハラ疑惑に巻き込まれた去年12月の全日本選手権にはエントリーもせず1年以上試合から遠ざかっています。

伊調馨さんはJOCの強化指定選手からも外れていて本格練習ができません。2020東京五輪に出場するためには2019世界選手権への出場が必須ですし、そのためには今年の12月の日本選手権を勝ち抜く必要があります。

■栄監督がパワハラで5連覇を阻止？

2016リオ五輪で、栄監督は吉田沙保里さんが勝って伊調馨さんが負けてくれればよかったんです。そうすれば「私が指導したほうがよかった」となるから。

しかし結果は吉田沙保里さんが負けて　伊調馨さんが勝ちました。こうなると、どちらの指導者がよかったのかという話になってしまいます。

栄監督のパワハラは田南部コーチへの嫉妬もあるかもしれません。やはり伊調馨さんと田南部コーチは目障りな存在でしょう。

■伊調馨の現在

ALSOKの伊調馨が2018年１月１日付で広報部へ異動。五輪４大会連続金メダルのレスリング女王は、ビジネススーツに身を包み、朝９時から夕方18時までフルタイムで業務に就いている。
具体的な仕事としては、取材申し込みの対応や社内報の制作などがあり、今はパソコンと格闘中。

「私の場合は今、試合出場の予定がないので。
会社のことを知りたかったし、社会のこともわからなければと」
「これだけ長い間、本格的な練習から離れたことはないので、筋肉が落ちて痩せてしまった」ため、今回改めてスーツを２着新調した。

引用：web　sportiva

大きな期待がかかる東京五輪を目指すのか？その胸中は

――東京五輪を目指すのか。
「そこは日によって、波があるというか。後輩たちとやっていると、指導の道も面白いなと思ったりもしますし」
――五輪を目指すため、練習したくても練習場に行けない状況なのか。
「田南部コーチがああいう状況なので、また(誰かに)ご迷惑をかけるんじゃないかと思ってしまいます。それに現役を続けるとなると、栄体制の元でやるしかないので、また色んなことを我慢しながらやっていくとなると……。」
――目指すに目指せない？　
「うん、そうですね」

「自分みたいに至学館じゃないところで練習している選手もたくさんいる。そういう子たちにも自分みたいな思いはさせたくありません。遠征でも至学館の子達ばっかり選ばれるというのが結構あったりとかするので。そういう体制は変えていきたいですよね。だから(試合で)勝つしかないというか……、栄監督に勝つには。」
引用：文春

遠征に行けない選手に実力があったら、若い芽を潰してることになります。

栄監督は2020東京五輪で女子に関しては、至学館大学関係者のみが出場できるようにすると明言してるそう。

ずっと至学館大学からオリンピック選手が出ているから、そういう形で栄理事が独占したいというはここ数年、女子の強化が始まってからは明らかだといいます。

●最後に

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至学館大学が独占企業のような状態になっています。もしパワハラが本当ならそれ相応の処分が必要です。

栄監督にとって、自分が育てた伊調馨が別のコーチのもとで4連覇、国民栄誉賞というのは、男同士の嫉妬もあると思います。

パワハラを告白したのは、女子ばかり注力されて男子に目が向けられないもどかしさもあったかも。

会長と副会長がパワハラを知らなかったとは思えないし、相撲協会を彷彿とさせます。

内閣府は日本レスリング協会にパワハラの事実確認をするそうなので、結果を待ちたいと思います。伊調馨さんは告発文には関わってませんが、内閣府からの捜査には協力する方針です。